第1話 方向音痴と能天気と関西弁

 

 

 アセリア暦4305年のトーティス村の南、精霊の森ーーー。
いつもどおりの長閑な時間が流れるこの森で、未曾有の厄災が訪れようとしていた・・・

 

 

 

 「さて…と…村は近いのか…?」
1人の旅人が森に迷い込んでいた。ちなみにこの森は山に囲まれ、その向こうは海。この森に至るには北から村を経由して来るというのが普通なのだが。村を通らずに、どうやったらこの森へ迷い込めるのだろうか?
 「私はラドルと名乗ったほうがいいのか…?」
旅人は1人そうぼやきながら、ボサボサの黒髪を掻き分ける。
その片手には地図。
「・・・で、ここはどの辺りだ?」
頭上に「?」を浮かべ首を傾げた。
「…ん?」
ふと空を見上げたとき、
「…何アレ」
空から、何かが降ってきた。
次の瞬間―――――――

 

 

 同じ頃、森に人間の少年2人とハーフエルフの少女が狩りに来ていた。
「樹ごと吹っ飛ばすヤツがいるかよ馬鹿女!!」
「一々うるさいわね!」
繰り広げられる口喧嘩に腰に剣を携えた少年――クレスはどこか疲れたように肩をすくめる。
 この2人の口喧嘩はすでに日常茶飯時、クレスは無理に止めようとしてもとばっちりを受けるだけで、放っておいたほうがいいことを身を以って知っていた。1年前の旅の仲間であるミントが今ここにいればうまく取り収めてくれるのだが、生憎彼女は現在ユークリッドまで出かけていた。
 クレスがこめかみを抑え、頭痛に耐えていると、いつの間にか口喧嘩がやんだことに気づいた。
 しかも、口喧嘩を繰り広げていた2人――チェスターとアーチェが空のある一点を見つめていた。
「…?2人ともどうし――」
クレスも2人の視線を追 い、見つけた。
「アレは…隕石?」
空から光る何かが勢いよく地上に突進している。
 隕石と思われるその物質は瞬く間に近づき、地上と衝突した。

 

 

 

 

 

 

 

 「…う…」
体中に痛みが走る。衝撃で吹っ飛ばされたようだ。
「チェスター!アーチェ!大丈夫か?!」
上半身を起こし、2人の無事を確認する。
「ああ…結構近くに落ちたのか?」
「あたしも何とか・・・でも、アレ・・・」
アーチェも起き上がるが、不安げに顔をしかめた。
「アーチェ?」
「…今の隕石、普通じゃなかったような…何か…魔力みたいな力をまとっていたような……」
クレスとチェスターは一旦顔を見合わせ、
「……行ってみよう!」
チェスターとアーチェも頷き、落下した方向へ駆け出した。
 嫌な予感を抱えて。

 

 

 

 

 

 

 

隕石落下地点――

 

 「あっはっは…」
ごまかすような笑い声を上げる少女。
「何が「あっはっは・・・」や…此処どこや!こんな辺鄙な星に来てしもうて…またガブリエル様に怒られるわ!」
少女を叱りつける、エセ関西弁の男。
「ま、何とかなるでしょ〜?」
「何とかなるゆうてもどないするんや!?移動手段もう無いで?!」
「…だ、大丈夫だって、きっと見つかるって!」
「アカン…コイツに任せたのが間違いやった…」
がっくりと肩を落として落ち込む男の傍らで能天気に少女が笑う。
「ま、どうせならこんな田舎な星ぶっ潰してこーよ。どうせ無くなっちゃうんだから今消しちゃってもいいんじゃなーい?」
「そないなことに時間使うんやったら移動手段探したほうが……」
何か言った?
男の抗議は少女の黒いオーラを感じる、無邪気な笑顔によって踏み潰された。
何でワイがこないな能天気と行動せなあんのや・・・
涙を流しながら自分の運命を呪った。
「ということでー…そこのストーカー3人!隠れてないで出てきなさーい!カエリラ様が遊んであげるよーv」
どこから取り出したのか、人差し指付きの棒を岩陰に向かって指した。
誰がストーカーよ!!?
アーチェはファイアボールを投げつけるが、カエリラという少女は軽く跳んで避けて見せた。
「テメェら・…何者だ?!」
次いでチェスターが弓に手をかける。クレスも同じく、剣の柄を握っている。
 能天気な少女と関西弁の男の会話は漫才のようでどこかのほほんとしているが、星をぶっ壊すなどととんでもない発言が出てきたからには、このまま放っておく訳にもいかない。
「私はカエリラ…んでこっちのウニはショウ、ヨロシク」
ウニと紹介された男ーーショウは再び怒鳴る。
「誰がウニや!!どこぞの邪眼の男みたいな完璧なウニやないで!!」
いや、誰だよ…
思わずツッコミを入れるチェスター。
「いや〜、ニーちゃんらもノリがええな〜」
久々にまともに入ったツッコミに感動するショウ。おそらくカエリラが相棒ではボケてもツッコミが入らなかったのだろう。
「ワイとコンビ組まへん?少なくともこの能天気よっかニーちゃんと組んだ方がええ気もするわ」
「ショウ〜…話がずれてるよ〜…しかも能天気で悪かったわね」
あくまでも楽しそうにカエリラが話の軌道修正を行う。後半部分は、表現するならドゴッという鈍い効果音付きで。
「ま、こんな辺鄙な星の人間だったことが残念やな…」
ショウは頭から血を流しながら本当に残念そうに言うと、腰の剣に手をかけた。
「ま、帰るんだったら今のうちやで〜…もうしばらくは生きれる命失いたくはないやろ?」
「どういうことだ…?」
「ん〜とね…キミ達がどれだけがんばっても私達には勝てないよー…ってことでしょ?」
カエリラが子供に教えるような口調で説明する。
「確かにこんな田舎の星のやつらなんてゴキブリ同然だもんねー」
「何だと…?!」
チェスターとアーチェの額に青筋が立つ。
「ねぇ…別に殺っちゃってもよくない?今死ぬももうすぐ死ぬも同じことだしぃ…」
殺りたくて仕方ないらしく、ショウを見上げる。
「ま、向こうも闘る気満々みたいやからな…」
ショウは面倒くさそうにため息をつくと、
「ま、殺るんやったら任せるで。」
数歩下がり、折れた樹の幹に腰を下ろした。
「まっかせなさーい☆」
カエリラは上機嫌に手を空に伸ばすと、そこに彼女の身長ほどもありそうな鎌が現れた。
「カエリラちゃんいっきまーす!」
クレスらが攻撃を仕掛けるより速く、鎌を思いっきり振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「?何だ…?」
隕石の落ちた場所へ向かっていた旅人は、進路方向から聞こえてきた轟音に眉をひそめる。
 不審に思いながら、落下地点に辿り着くと、
「隕石の爆風にでも巻き込まれたのか…?生きてるかー?」
3人が倒れているのを発見した。屈みこみ、域を確認する。
「とりあえず、生きてはいるみたいだな…爆風に飛ばされたにしちゃ斬られたような傷は無いよな…大方魔物にでもやられたか?」
再び地図で村の方向を確認すると、
「とにかくとっとと運ばなきゃヤバイな、コリャ…」
3人を引きずり、その場を離れた。

 

 

後書き

ギャグがかなり入りそうな予感・・・

>エセ関西弁
こんなキャラ出したかっただけです、はい。
無論鬼姫は関西弁など分からないんで、エセ。
GetBackersの笑師な感じで…武器は桜蘭舞○鞭で花井ですけど

>どこぞの邪眼の男
GetBackersの美堂 蛮。

 

モドル