出逢ってすぐ感じたのは、懐かしさ。

そして、羨望―――――

彼らは、僕が失くしたもの全てを持っているから

僕がどんなに足掻いても、手に入るはずのないものを

だから・・・・・・その全てに憬れた

 

 

 

第2話 再出発

 

 

 

 サルバの宿屋の一角、その場を異様な雰囲気が纏わりついていた。
「・・・・・・・・・・・・つまり・・・・・・」
「僕たちが、その竜を払い落とすのを手伝えばいいんだな・・・?」
クロードがぎこちない声色で訊ねる。アシュトンの背後、というよりその少し上を指差しながら。
 其処にあるものは――
「当たり前だよ!君たちのせいで僕はこんな背負うことになったんだからね?!」
彼が坑道内で戦っていた、赤と青の双頭竜。
 そう、アシュトンは双頭竜にとり憑かれるという、世にも珍しい体験をすることになったのだ。
「わ、悪かったって・・・」
「とりあえず、払い落とす方法は知ってますの?」
セリーヌが何気なく訊ねる。
「・・・・・・・・・・・・そ、それは・・・・・・」
空気が一瞬固まった。
 そもそも竜にとり憑かれること自体が珍しいことで、その方法は多く知られたものではない。
「・・・・・・昔読んだ本の中にそれらしきことが記されていましたわ。」
セリーヌが静かに口を開く。
「ほ、本当?!」
「ええ・・・・・・確か・・・・・・」
記憶を辿りながら、ゆっくりと語り始める。
 それは、大地と巨大は湖に抱かれた場所で聖杯と、山脈に棲む王者の涙を手に入れ、とり憑かれた場所で魔物・・・竜を払い落とす、というものだった。
「方法は分かったけど・・・・・・その巨大な湖と大地に囲まれた場所ってどこ?山脈に棲む王者って?」
リュウトが頬杖を付きながら、問題の箇所を指摘する。
「それなんだよな・・・・・・」
「地図あるんだけど・・・広げてみる?」
レナが荷物の中から地図を取り出し、テーブルの上に広げる。
「巨大な湖って此処かしら・・・・・・」
「その近くにあるのは・・・・・・山岳宮殿ですわ・・・!」
セリーヌがレナの指差した湖から辿り、すぐ近くの地点を指差す。
「山岳宮殿・・・・・・?」
「そう・・・・・・確か古い遺跡で・・・そうですわね、あの場所になら・・・・・・」
「じゃあ、明日早速出発しよう!!」
方法がわかって、アシュトンが勢いよく言い、立ち上がる。
「・・・分かったよ。とりあえず部屋は2つとってあるから・・・リュウトさんはレナとセリーヌと一緒でいいかい?」
クロードも同じく立ち、リュウトに目配せする。当のリュウトはキョトンと首を傾げ、
「・・・なんで?」
「いや、なんでって・・・・・・僕とアシュトンも一応男なわけだし・・・・・・」
クロードが言うと、アシュトンとリュウトは顔を見合わせ、
「・・・・・クロード、なんか勘違いしてるみたいだけど・・・リュウトは・・・」
「うん、よく間違われるけど、俺はだよ」

 

 

 

「は、はぁーーーーーーーー?!?!?!

 

 

 

クロード、レナ、セリーヌの声が見事にハモった驚愕の声が、サルバの宿に響き渡った。

 

 

 

 「リュウト」
部屋に入るなり、アシュトンが心配そうに声をかけてきた。
「ン?何、アシュトン?」
リュウトはベッドに腰掛け、アシュトンを見上げる。
「あの、レナっていう子・・・・・・」
「うん・・・・・・確かに、同じだけど・・・・でも、違う」
リュウトは虚しく首を振り、窓の外を眺める。
「レナがどうかしたのか?」
クロードが会話を聞いていたらしく、怪訝に訊ねてきた。
「うん・・・・・・ホラ、俺もレナも耳が尖ってて長いでしょ?・・・俺、人を探してるんだ。俺とレナみたいな外見の、女の人。」
「!そういえば・・・・・・」
「でも、俺が探してるのはレナじゃないよ。・・・・・・姉、なんだ。暗い赤褐色の髪の色で、目も深い赤の背が高くて、気高い人なんだ。あったらすぐ分かると思う、見かけたこと・・・ないかな?」
リュウトは懐かしそうに、そして寂しそうに目を細める。
 もう姉と別れて、何年になるのだろう。もしかしたら、此処にはいないのかもしれない。それでも、リュウトは姉を探していた。

 

 

「必ず、また逢えます・・・・・・だから、待っていて」

 

 

最後に聞いた言葉を信じて。

 

 

 

 「ごめん・・・・・・見たことないな。でも姉だったらきっと向こうも探してるんじゃないかな?」
「うん・・・・・・そうだよね・・・・・・」
リュウトはベッドに仰向けになり、虚ろに呟く。それを心配してか、
「そろそろ寝よう・・・明日からまた急ぐし」
クロードがいい、灯を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 独りには慣れていた。

寧ろ、それが心地よかった。

何も、失うものなんてないから・・・。

そう、失くしてばかりで・・・大切な、失くしたくないものばかり

失くし続けて

もう 何も残されてないのに・・・・・・

今更、また人と馴れ合う?

馴れ合っても・・・きっと、また傷つけて、また傷ついて・・・・・・

今更、救いの手を待ち望む?

差し伸べられるはずのないことは、もう分かりきっているのに・・・・・・

今更、彼らに何を頼る?

頼ってはいけないことくらい・・・巻き込んでしまうことなんて分かっているのに・・・・・・

今更、また失う・・・・・・?

 

 

 

 

 

 

 

++後書++

ヤッパリ短い・・・・・・
こっち側はストーリー重視というよりリュウト君の心情,過去重視で行きたいと思います〜。
ゆっくりペースで

 

モドル